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灰色の空に舞う
貴方の存在
貴方と居た記憶
貴方が裏切ったあの日
忘れ去られし1ページ

第六章 「灰色の空」

「疲れた・・・」
クロに言われ大急ぎで階段を駆け上がり、部屋に入った灯達。

「クロさん・・・大丈夫なんでしょうか・・」

心配そうに入ってきたドアを見つめる氷

「大丈夫・・・だ!!!アイツなら・・・」

「根拠は何所にあるんです?!」

「無い!!」

「じゃあ

「俺等が無事って信じてやんないで誰が信じるんだよ!!」

「・・・そうですね、御免なさい」

一瞬の沈黙を、クロノが破る。

「次は・・・誰が相手だ」

「ックロノ!!危ない!!」

ソウゲツに言われ振り返る
その頬を掠め銃弾が走る

「この俺が・・気付かなかった・・・だと?!」

「当たり前だよ、クロノだから」

聞き覚えのある声が頭に響く

「誰だ・・・?!」

「これまた随分と大人になったねー」

懐かしい、能天気な声

その声の主はクロノの目の前に一瞬にして現れた
細長い尻尾
左右対称に跳ねた髪

「久しぶり、可愛い弟さん」

記憶の片隅に居た
そのライチュウは
正しく、クロノの兄

灰霧だった。

「お前・・・どうして此処に・・・」

問いを投げかけるクロノに対し笑顔で答える灰霧

「ふふふ・・・なんでだろうね、」

「テメェも奴等の仲間か・・・?!」

「奴等?何をいってるのかな」

「この裏切り者・・・!!!」

「はっはっは、僕も随分と嫌われた物だなぁ」

「灯、お前は仲間を連れて行け」

「は?何で急に・・・」

「"次"は俺ってことだよ」

「クロノ!!僕もここに残るっ」

意志を訴えるソウゲツに対し、クロノは睨み怒鳴る

「五月蝿い!!此処は俺一人で十分だ馬鹿!!」

「うぅ・・・」

話を戻すように灯は言う

「・・・まぁ、お前なら大丈夫だろうから・・・俺は行くぞ?」

「ああ」

「一応言うけどよ、死ぬなよ」

「こんなもん楽勝だ」

灯は残った仲間を連れてドアへと向かっていった。

「『俺一人で十分だ』なんて、随分自信過剰だね~」
クロノの頭に手を乗せる

「五月蝿い、触るな」
即座にその手を振り払う

「まぁそう嫌わないでよ」
彼は笑顔で言う

「テメェ・・・自分の罪を理解できてねぇ様だな」

「罪?ああ、僕が君達家族を捨てたこと?」

其の言葉に過剰反応するクロノ
眼を見開き呟く

「殺してやる・・・!!」

「ははは!!果たしてクロノが僕に敵うのかなぁ?」

「五月蝿い!!!」

クロノは大剣を振るうが、灰霧はいとも簡単に避ける

「クソ・・・これじゃ埒があかねぇ・・・」

「あっはっは~♪遅い遅い!!」

気付けば灰霧はクロノの背後に居た。

「ッ・・・!!!」

面妖な笑みを一瞬浮かべ、肩に向かって拳銃を発砲する。

銃弾は見事命中し、殺風景な床に紅いものが飛び散る。

「ク・・・早・・い・・・・」

「クロノは遅いね~♪」

苦痛で表情が歪む。

「もっと痛がると思ってたけど・・・中々痛みには強いんだね、感心した」

「クソ・・・」

クロノは剣を放し、灰霧に攻撃を仕掛ける。
何発かの攻撃のうち、一つが灰霧の体を掠った。

「それ、反則だよ~?剣士が剣を放したら駄目じゃん~」

「黙れ、俺は剣士じゃない・・」

「ま、僕の速さには追いつかないだろうけどさ」

灰霧の動きが一瞬緩んだ
その隙を狙ってクロノは攻撃する。

見事命中した。

「痛たた・・・もう本気出してもいいかな?」

「真面目に戦え!!!」

「分かった、じゃあ本気と行きますか」

おかしい、
最初に剣を置いた時は灰霧の動きに何とか合わせることが出来た。
だが灰霧が本気を出すとともに、少しずつであるがついていけなくなってきている。

「どうしたの?段々遅くなってきてるよ~?」

「五月・・蝿い・・・」

とうとう立っているのが精一杯になった
懸命に力を振り絞り、よろけながらも灰霧の攻撃をよける。

「鈍いよ~♪」

更に加速し続ける灰霧。
此処までか、と諦め掛けた時
心臓に痛みを感じた

「ッう・・・」

咄嗟に胸を押さえる
灰霧の攻撃は加速しているが最初以外当たっていない筈だ
外側からの痛みではない

これはなんだろう

全身に流れる血が熱い

呼吸が荒くなる

苦しい・・・

落ち着こうと目を瞑る。

「隙有りっ!!」

灰霧がクロノの後頭部を蹴る瞬間
クロノの体がそれをいとも簡単にかわした。

「あ、あれっ?!」

一瞬焦りを浮かべる灰霧
その隙を突くクロノ。

彼の表情はさっきとは変わりものにならないものだった。
凍て付いた眸、その眸は不思議なことに両目が紅い。
薄らと笑みを浮かべる口。
鋭く尖った爪。

「君・・ホントにクロノ・・・だよね?」

「何を言ってるんだお前は」

話しながらも攻撃を止めようとしない
彼の脳にはもう殺すことしかないようだ。

「・・・そうか」

悟ったように真顔になる灰霧。

「君が、鬼の血を受け継いだのか・・・」

「鬼・・だと?」

攻撃を止める。

「なんで僕じゃないのかなぁ、残念だ」

残念そうな顔をして続ける

「僕等の一族は代々鬼の血と呼ばれる特殊な能力を引き継ぐんだ」

「能力・・・」

「僕等の代では君が受け継いじゃったって訳さ!ホント残念だなぁ」

「そりゃ残念でした」

攻撃を再開する。
鬼の血というのは中々凄い
さっきまで付いていけなかった灰霧の速さに今は付いていけている。
否、それ以上の速さだ。
攻撃力も上がり、一回一回当てる毎に着実にダメージを与えている。
数分の間に数十発は当てた。

「フフ・・・結構キツイねこれ・・・」

喀血した灰霧の表情からはすでに笑みが消えている。

おおいに隙が見えた。
其れを逃さず急接近し、彼の腹を殴る。

彼は後ずさり、何かを手に其れを破壊した。

「何をした」

「ん?ちょっとね・・・」

「答えろ」

爪を首に突きつけるが彼は微笑んだままだ。
真顔のまま首を切裂く。

「痛・・いなぁ・・」

首から大量に血を流しながら、彼は苦笑を浮かべ言う

「クロノ・・・」

「なんだ、命乞いか」

「違・・・う」

「じゃあなんだ」

「ふふふ」

灰霧の笑いに違和感を感じたクロノは警戒する。

其の時、クロノと灰霧の間で爆発が起こった。

「くッ・・・」

それを合図に次々と部屋のいたるところが爆発する。

一瞬にして部屋は火の海となった。

「クソッ・・・見えない・・・」

「あっはははは!!隙だらけだよ!!」

火の海から灰霧が襲い掛かってきた。
クロノはその攻撃を避けることが出来なかった。
腕に強烈な痛みが走る。
深い傷。
灰霧の手には刃物が、
「クソッ気付かなかった・・・何所いった?!」

「此処だよ」

灰霧が火の海の中からゆっくり歩いてくる。
血が付いた刃物を舐めながら。

「今度は何する気だ」

灰霧は一瞬驚いた顔をして、また微笑む。

「さようなら」

灰霧が言い終わると同時に彼の体が爆発に巻き込まれた。

「何・・を・・・・・」

あまりにも呆気ない彼の死に驚きつつ、ドアを開けようとする。

しかし、開かなかった。

そこでクロノの脳裏にあることが浮かんだ。

灰霧が破壊した物、あれが鍵だったようだ。

「は・・・そういうことかよ」

鍵を探そうとも辺りは火の海。ましてや粉々である。
見つかるはずが無い。

クロノは諦め部屋の隅に座る。

一瞬眩暈がした。
大分前に撃たれたし、流石に血が少なくなってきているのか。
なんだか視界がぼやける。
これも仕方ない。
これだけ燃え盛る部屋に酸素を必要とするなんて無理なことだ。
暑い、熱い。

眼を瞑り、彼は呟く。

「やっぱり俺も、死ななきゃならないのか・・・」

彼の手から力が抜けるのは、その直ぐ後だった。



ほら、灰色の空が見える。


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