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目の前に立ちはだかる白い闇
忘れていた因縁
嫌だ
止めて
思い出したくない
とっくに封印したはずなのに
どうして
今僕の視界に居るの


第五章 「陰陽」

ドアの向こうは狭い階段が螺旋状になっている。
どうやら階段を上ったところに更に階段があるようだ
しばらくドアの前で悔やむクロノをクロはじっと見つめる。
彼は蘇芳が恐らく"死ぬ"ということを理解していたのだろうか
戦友、懐かしい響き、
僕にもそんなものが在った。

「何してんだよ二人とも!!!あいつ等の意思を捨てるつもりか?」

灯は軽く説教をするが、クロノには届いてない様だ。
灯はさらに近づいて言う。

「てめぇ、へたれか?何其の程度のことで悩んでんだよ馬鹿か」

「灯姉やめようよ;友達を失うことはとても辛いんだからさ・・・」

クロは灯を止める。

「分かってるよ・・・分かってる・・・だけど、奴等の勇気を捨てるようなことはしたくないんだよ」

「・・・いいんだクロ。俺が暗くなってたから、さ。よし!行こうか!!」

人が変わったようにさっぱりするクロノに、灯は質問する。

「で、お前本当にへたれなのか?」

「んなわけねーだろ!!!考え事だよ!考え事!!!」

「本当か~?はっはっは!!!」

「あ!てめコラ!!待ちやがれ!!」

一行は階段を駆け上がって
次のドアを開けた。

開けた先は真っ黒の部屋。
白っぽい服装は目立ってしまう程一面漆黒の部屋。
明かりはついていないのに自然と周りが見渡せる。
部屋に物は何も無い。
あるとすれば、向こう側にドアが一つ。

「何も無い部屋だな・・・」

「流石にこう何もないと・・・怖いですね」

面白い物を見つけたような顔で言う灯に対し、
自分の体を抱えながら氷は言う。


そこに、一つの白い影が現れた。


「やぁ、随分と大勢の仲間を作ったんだね」

その声にクロは過剰に反応する。

「ッ其の声は・・・まさか・・・」

白は段々近づいてくる。

「そうだよ、久しぶりだね、シュバルツ」

「ヴァイス・・・!!!」

「名前を覚えくれてるなんて、光栄だね」

やがて白は、姿形がはっきり見えるまで近づいた。

白い服に白髪。
白い尻尾は細く途中から二つに分かれている。
其の容姿から、エーフィということは分かる。
しかし通常のエーフィとは少し違った。
何もかも『白い』ということ。

「どうして・・・生きてるんだ・・」

「くだらない質問だね、また君に会いに来た、でいいかな?」

「まともに答えろ・・・!!」

「理由なんて無いさ。僕は死んだ覚えなんてない。」

「嘘・・・だ・・・お前は・・・僕が・・殺したはず・・・」

「嘘?嘘なんてこの世界に腐るほどあるだろう?」

「違う・・・僕が殺したんだ・・・」

「ま、そんなことはどうでもいいんだ、僕が此処に居る理由はね」


「君を"殺す"ためだよ」

不気味に笑う白い者。
手には二つの片手剣

「っ皆逃げて!!!コイツは僕目当てだから!!!先に進んで!!」

「クロ・・・お前の知り合いか?」

恐る恐る灯は質問したが、クロは聞き入れず叫ぶ

「先に行け!!!」

「お・・・おう・・・」

驚き気味な表情のまま、灯は皆を連れてドアに向かった。

「クロ」

「何」

「お前も生きて帰って来いよ」

「分かってるって!」

振り返らずに言うクロを数秒見つめ、次のドアに行った。

「安全は確保したかい?退屈なんだよ」

「ああ」

相槌を打ち、クロは眼鏡を外す。

「もう一度、お前を地獄に葬ってやるよ」

迫り来る追っ手達をやりすごし、暗闇を走る二つの影。

白と、黒。

白い方はヴァイスと言った。
エーフィの亜種であった。

黒い方はシュバルツと言った。
ブラッキーであった。

二人は互いに助け合い、生きてきた。

しかし、ある日のこと。
ヴァイスの様子がおかしかった。

「ヴァイス・・・?」

全身白い筈なのに、其の日は赤く染まっていた。

「僕ね、気付いたんだ」

「何?」

"殺すって、こんなに愉しいものなんだね"

「え・・・?」

「シュバルツは分かってくれるよね」

「何・・・言ってんだ・・・」

「理解してくれるよね?」

「理解できるはず無いだろ!!!」

そういわれてヴァイスは一瞬悲しい顔をするが、面妖な笑みを浮かべ言う。

「そっか・・・分かってくれないのか・・・じゃあ」

「・・・」

「此処で死んでよ」

「今・・・なんて・・・」

「言っても分からないの?」

「お前・・・どうしたんだよ・・・」

「・・もうめんどくさいから、いいや!!」

そう言うと、ヴァイスはいきなり襲い掛かってきた。

「うっ」

押し倒され、首を絞められる。
シュバルツの脳裏に浮かぶのは狂う前のヴァイス。

彼に何が起きたのかは知らないが、防衛を優先した方が良さそうだ。

足でヴァイスを蹴り飛ばし、起き上がる

「ゲホゲホッ!!」

視界がぼやけて見える。
酸素不足で脳が麻痺してきてたのか。

ヴァイスは愉しそうな笑みを浮かべたまままた襲い掛かってくる。
今度は片手にナイフを持っている。

「クッ・・・」

その手を掴み、2,3度蹴りを入れてから腕を逆に向ける
バキバキと何かが折れるような音がした。

「!!!」

「お前は・・ヴァイスなんかじゃないだろ・・・」

「は・・痛いなぁ・・・」

シュバルツを睨みつける。

「お前は誰なんだよ!!!」

「僕はヴァイスだよ?」

置いてあった拳銃を取り、ヴァイスに向ける。

「違う!」

1発発砲する。
拳銃を持つ手が震える。

「ッ・・・・痛・・・」

「どうして・・・どうしたんだよ・・・」

「君が・・・認めてくれないから・・・死んでもらうしかないんだよ!!」

ヴァイスは短剣を素早く振る

「痛ッ!!」

シュバルツの腕に深く傷を付けた。
シュバルツも負けじと2発目を発砲する。

「は・・・は・・・拳銃使うなんて・・ずるいな・・・」

「う、五月蝿い!」

「余所見は禁物だよ?!」

「うッ・・・」

ヴァイスが投げた短剣がクロの足に刺さった。

「死ね!!!」

残りの弾を一気に発砲する。

「ゲホゲホッ・・・ク・・クク」

「何がおかしい・・・」

「クク・・・あっはっはっはっは!!!」

「何なんだよ!!!」

「・・・殺す」

ヴァイスが指を指すとシュバルツの体が宙に浮かびあがる。

「ッく・・・」

見えない何かに首を絞められているようだ。
念力だろうか。
シュバルツは懸命に照準を合わせ、発砲した。

其れは見事ヴァイスの心臓を貫通した。

「ふ・・ふふ・・ははは・・」

感染してしまったであろう彼は最期まで、面妖な笑みを浮かべたままだった。

我に帰ったシュバルツは悲しい眼差しで屍となったヴァイスを一回見て、その場をさった。

忘れてしまおう。
彼の思い出を。
今は其れしかないんだ。
否、受け入れることなんて出来ない。

対となった色の者が向かい合う。
ヴァイスが口を開いた。

「それにしても、酷い歓迎だね。感動の再開って所じゃないのかな?」

武器を見つめのんびり話す。
警戒し、戦闘体制のままクロは言い返す。

「どうして生きてる・・・」

「ふふふっ質問が単純すぎるよ。僕はね、

生 き 返 っ た ん だ よ」

「何・・・?」

「正確には生き返らせてもらった、かな。」

「ふざけたこといってんじゃねぇ・・・!!!」

顎に拳銃を突き付ける。

「おっとぉ・・・え?僕がいつふざけたかな?」

「てめぇ・・・!!」

容赦なく発砲するが間一髪のところでかわされる。

「ふふふっ昔から変わらないね?」

気付けばヴァイスは背後にいた。

「ッいつの間に・・!」

瞬時にヴァイスから遠ざかる。

「さぁて、つまらない雑談は此処までだよ」

彼はゆっくりと目を閉じ言う

「愉しい愉しい殺し合いの始まりだ」

急に目を開き、襲い掛かってきた。

「っく・・・・!!」

戦闘開始からものの5分も経たぬうちに、クロの頭からは紅いものが流れていて、手からも滴っている。

「あれ?こんなに弱かったっけ?」

「五月・・蝿い・・・」

「本気出してくれないと・・・」

ヴァイスは笑顔のままダガーを構えてくる。

「クソ・・戦うしかないのか・・・」

眼鏡をはずし、床に投げる。

「ほらほらほら!!よけないと死んじゃうよ?!」

「甘い」

クロはヴァイスの腕を掴み動きを止める。

「やっと本気出してくれたのかな」

クロの腕を振り払い物凄い速さで攻撃を繰り出す。
クロはそれを容易くかわし、
一瞬の隙を見計らい
ヴァイスの腹を一蹴りする。

ヴァイスは喀血したが面妖な笑みを浮かべたままだった。
「やっぱシュバルツは強いね。」

話を無視して何発も蹴りを入れる。
最後の一蹴りをした瞬間、足に激痛が走った。

「ッッ!!!!」

手に稲妻を走らせたヴァイスが更に笑む。

「でも・・・まだ甘いね」

ヴァイスの電撃は相当強いのか、左足は殆ど動かない。
麻痺してしまったのか。
苛立ちを覚えながら戦闘を続けるが、上手く動けない。

「チッ・・・」

クロは左足にナイフを刺す。
痛みが走るが少し動くことが出来そうだ。

「随分賢いことをするんだね」

なおも笑顔で技を繰り出す。

「俺は・・・変わったんだよ!!!」

銃を連射するが、どうも当たらない。
やはり近距離が有利か。

業と近くに寄り、思い切り蹴りを入れる。
ヴァイスの体は壁に打ち付けられる。
さらに蹴る。

「ふ・・・そうやって沢山の人を殺してきたんだね・・・」

「何を言い出す」

背を踏みつける。

「く・・・・」

窒息したか、まぁいい。
クロは落ち、割れてしまった眼鏡を拾い掛けると、ドアの方に向かう。

ザク

痛い。
何か刺さった。
見ると横っ腹当たりに紅い染みが広がってる。

振り向くと、面妖な笑みを浮かべたヴァイスが剣を此方に向けている。
ヴァイスに刺されたのか。

自分の横っ腹に刺さった剣を抜きヴァイスの腹から胸に掛けて引き裂いた。

「ぐ・・・これでお会いこだ・・は・・・ははははは!!!」

「五月蝿い!!!死ね!!!!!」

クロは白が赤に染まるまで剣を振り下ろすのをやめなかった。

我に返ったクロは気付く。
呼吸が、し難い。
喀血している。
急がなければ、灯姉に生きるって約束したから。

階段を一段一段下りるクロの呼吸は荒く、喀血も回数が増えてきた。
「は・・は・・・流石にキツイな・・・」

大分体に毒が回ってきているようだ。

「やっぱり・・ゲホ・・約束守れない・・・かも・・・ゲホ・・」

階段の端に座りもたれかかる。

「せめて・・ゲホ・・空を見て死にたかった・・・な・・・」


手の力が抜け、膝から落ちる。
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